2021年7月6日火曜日

ゲーム理論で考える社会戦略ー”得”を最大化する方法【読書記録】

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ゲームとしての社会戦略 ゲーム理論

ごきげんよう。今回は 「ゲームとしての社会戦略 ー計量社会科学で何が理解できるか」の読書記録です。エッセイにするような題材が思い浮かびませんでした。

 例のごとく図書館から借りてきました。 

 

 アマゾンはこちら。

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E6%88%A6%E7%95%A5-%E5%A2%97%E8%A3%9C%E7%89%88-%E8%A8%88%E9%87%8F%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%A7%91%E5%AD%A6%E3%81%A7%E4%BD%95%E3%81%8C%E7%90%86%E8%A7%A3%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%8B-%E6%9D%BE%E5%8E%9F-%E6%9C%9B/dp/4621079492


本の紹介

  • 社会を数字で見る

軽く本の紹介をしておきます。

 「ゲーム理論」という、人の利害を数字でとらえて人々がどんな行動を取るか予想するという考え方があります。本書はそれ自体やそれと関連のあるものを用いて、選択、投資、取引、合意、選挙、リスク等々、実に様々なことの裏にある「数学」を具体例を沢山出して説明しています。

 といっても本格的な数学ではなく、親しみやすい数学です。
発刊されたのは平成20年。

 主観的な読みやすさなどはこんな感じ。
| 要素      | 10段階評価 |
| 内容の広さ   | 10 |
| 文理傾向    | 理系寄り |
| 文章の難しさ  | 6 |
| 前提知識の多さ | 4 |

 

そのデータはどのくらい確実か?

 エントロピー=確率xlog(確率の逆数)の和


 エントロピーとは「乱雑さ」のことです。


 例えば、じゃんけんを3回してグーを出した人が2回、パーを出した人が1回勝った時、グーを出したら勝ちやすいといえるか?ということです。いえませんね。


 このエントロピーを計算するとすごく大きくなります。一方で、じゃんけんを30回くらいするとかなり小さくなります。


 ある統計が確実かどうかの指標の1つとして、この「エントロピー」が使われているようです。

 

市場の失敗

 市場は売り手と買い手が得をしようとして動いて成り立っているものです。基本的に市場は放置していても成り立つのですが、「市場の失敗」という現象があります。一つ例を出してみましょう。

 中古品を売る2つの会社AとBがあります。AとBがそれぞれ良質な中古品を売るか、粗悪な中古品を売るかによって2つの会社の利益は変わってきます。

 

<条件>

  • 中古品であるため、顧客は良質か粗悪かの判断ができない。
  • 利益は短期的なもの(口コミなどがない)とする。
  • AもBも全く同じ規模の会社である。

 以上の仮定をふまえると、以下のような図が成り立ちます。

 数値は[Aの利益/Bの利益]です。

 

|A/B |B良質|B粗悪|
|A良質|2/2 |-2/5  |
|A粗悪|5/-2  |-2/-2|

 

 左上の理由:良質なものを売るコストはかかるが、顧客は満足するから。

 左下と右上の理由:片方が粗悪なものを多く安く売っていると、顧客はそちらに集まるから。

 右下の理由:顧客は不満をもつから。 

パターンA:それぞれが自身の利益のみを追求したとき

 Aから見ると、良質なものを売った場合利益は2か-2、粗悪なものを売った場合は5か-2なので、利益を求めて粗悪なものを売ります。同様にBも粗悪なものを売ります。

 その結果、AもBも粗悪なものを売るので右下の[-2/-2]のケースに行きつきます。ところが我々からみればこれは愚かな選択でしょう。なぜなら、AもBも良質なものを売れば両方が得をするからです。

 これがゲーム理論から見た「市場の失敗」です。そして、両者にとって最善の状態(今の場合、表の左上の[2/2])を「パレード最適」といいます。

 では、AとBが利益を得るにはどうすればよかったか?それは、「相手の出方を考える」ことです。

パターンB:お互いの利益を追求したとき

 Aが粗悪なものを売ろうとしたとき、ふと「これでいいのだろうか」と立ち止まります。自身が粗悪なものを売ろうとしているということは、相手も粗悪なものを売ろうとしているはず。両方が粗悪なものを売ると顧客は大変不満を抱くため利益は下がる、と考えます。

 そこでAはBへ「共に良質なものを売りませんか」と交渉する。しかしBはこう反論します。「あなたがたAが良質なものを売って我々Bが粗悪なものを売れば、我々が5儲かる」と。

Aも言い返します。「あなた方Bが5儲かるか2損するかは私たちにかかっている。良質なものを売れば利益が保証される」と。

論理を理解したBは、自身の最高利益である5をあきらめ、2の利益を得ようと考えて交渉に同意しました。

 ここから見えてくるのは、「自己中はあまり得をしない。他者の利益も考えてはじめて自身も得をする」ということです。現在の市場はこの考えを軸として回っています。

 

現代の政策は雁字搦めである

 政策もこの理論に従ってきました。出来るだけ多くの人が利益を得ることができるように、誰かだけ損することが無いように政策を決めてきました。パレード優位になるように、です。


 しかし、今や全ての政策がパレード優位になってしまいました。年金制度の創設を掲げたとき、特に損をする人は居ませんでした。しかし今や単純に年金問題を解決するには、高齢者と労働者のどちらかが我慢しなければなりません。現在最も有力な解決法が「年金をなくす」になっているのも、この対立を解消するのが難しいからです。


 政治について非常に意見が割れやすいのも、どのパレード優位を選ぶかが論争になっているからです。最良の選択はすでになく、最悪の選択は切り捨てられています。どのパレード優位=政策を選ぶかは個人の好みによるのです。

 

短いですが、今回の記事はここまでです。ご観覧ありがとうございました!

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