2021年8月4日水曜日

【エッセイ】自然に学ぶ「合理性」とは

生物の多様性 合理性 弱者の戦略 エッセイ 読書感想 要約

弱肉強食といいますが、本当にそうでしょうか。ガ、ハエ、なめくじといった弱そうな生き物でもしっかりと生きています。彼らはどうやって生き残っているのか?そこから自然の、我々の”合理性”を見出します。

 ごきげんよう。
 今回はこちらの『弱者の戦略』という本を読んだうえでのエッセイです。


 amazonはこちら。例のごとく図書館で借りました。

https://www.amazon.co.jp/%E5%BC%B1%E8%80%85%E3%81%AE%E6%88%A6%E7%95%A5-%E6%96%B0%E6%BD%AE%E9%81%B8%E6%9B%B8-%E7%A8%B2%E5%9E%A3-%E6%A0%84%E6%B4%8B/dp/4106037521

 主観的な読みやすさなどはこんな感じ。
| 要素 | 10段階評価 |
| 内容の広さ | 7 |
| 文理傾向 | 文系寄り |
| 文章の難しさ | 2 |
| 前提知識の多さ | 2 |

 誰にでもお勧めできる本です。Amazonのレビューにもある通り、知識本として読めば知識が身に付きますが、その知識は非常に活用しやすい知識なのですごく有益。

 

弱者は強者である

  強い動物、と聞いて何を思い浮かべますか。ライオン、タカ、サメ、トラ……色々あるでしょう。その動物たちは、「正面から戦って殆どの動物に勝てる動物」です。
 逆に弱い動物は、「正面から戦ってほとんどの動物に負ける動物」です。
 しかし、本当に弱い動物は弱者なのでしょうか?

 弱い動物は強い動物に不利な環境で過ごしたり、繁殖数を増やしたりして種を繋ぎます。その結果、強い動物よりも「環境変化への適応度」が高くなっています。

 下の図を見ると、昆虫等の食べられやすい動物は絶滅する可能性が低いです。

(ソース:https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h25/html/hj13020201.html)

 おおよその傾向として、、「種の数が多い動物ほど絶滅危惧種の割合が少ない」というのが分かるでしょう。これは、種の数が多い=様々な環境に適応してきたということであり、人間が変えた環境にも適応している、ということです。
 一方で、種の数が少ない=様々な環境に適応する必要があまりない強者は、人間が変えた環境に適応しきれないため、絶滅のリスクが高いです。

 こう考えると、弱者は決して弱者ではないのです。同時に、強者は決して強者ではないのです。

 

弱者は工夫を凝らす

 例えば、モンシロチョウ。モンシロチョウは昆虫であり、鳥に食べられる弱者です。
モンシロチョウはアブラナ科の葉にしか卵を生まないと習いましたね。そしてアオムシはアブラナ科の葉しか食べません。それは何故でしょうか。

 実は、多くの植物は昆虫に食べられないために毒を葉に含んでいます。ところがモンシロチョウの場合、アブラナ科にある毒(辛味)に対してだけは耐性があるので食べることができるのです。なのでアブラナ科以外の葉は食べられませんが、逆に他の昆虫はアブラナ科の葉を食べることができません。

 モンシロチョウは、植物の対抗策を逆手にとって、自らの餌の種類を減らす代わりに確実にアブラナ科の葉を食べられるようになりました。すごく賢くないですか?

 更に、成虫になったモンシロチョウはヒラヒラと飛びます。あの理由は、天敵である鳥が直線的に飛んで食べに来るのを避けるためです。また、羽を白くして日光を反射させ、鳥が狙いを定めにくくするという二重の対策をしています。
 強者である鳥は高速で虫に向かっていけば捕食ができるのでそこまで工夫をする必要がないのです。

 しかしながら、実際に見るとわかりますが、黒い蝶は普通に真っすぐ飛んでいると思います。あれは真っすぐ飛ぶことで小さいカラスか何かの鳥だと誤認させるという目的があるようです。黒いので日陰で目立ちにくいというのもあるでしょう。

 

弱者はオンリーワンかつナンバーワンである

 世界の至る所に生き物がいます。なぜ至る所に生き物がいるのでしょうか。
理由の一つとして、「元いた生息地を追い出されたから」ということが考えられます。例えばラクダ科にはラクダとアルパカがいますが、それぞれ砂漠と高山という悪環境での生存に特化した不思議な生き物です。

 こうは考えられないでしょうか。ラクダ科の先祖は元々草原に居たが、他の生物に追い立てられ、ライバルの少ない砂漠や高山に落ち着いた…と。確かにそれらは悪環境ですが、それさえ乗り切ればライバルが少ないので楽園です。

 かつてラクダ科は弱者であったが、現在のラクダやアルパカは特定環境下でしか生きられないオンリーワンであり、かつその環境下でナンバーワンなのです。

 

人間が弱者から学べる合理性

 現在の人間は明らかに強者です。しかし、太古はマンモスに苦戦しましたし、今でも道具が無ければクマ等に襲われます。私たちも元々は弱者なのです。そして、資本主義社会において労働者は弱者です。
 今、立派に生きている自然の弱者から私たちが学べること、生き残るために必要な”合理性”とはなんでしょうか?

 それは、強者から逃れ、環境を上手く、狡猾に利用することだと考えます。自分にしかないオンリーワンな環境を見出し、そこでナンバーワンになることです。そうすれば強者は入り込むことができません。
 そのようなオンリーワンな環境を”ニッチ”と呼びます。動物は遥か昔からニッチを利用してきました。現代でも、多くのベンチャー企業は「ニッチな分野」から飛躍します。

 ところで、狡猾に利用するとは何でしょうか。
 前にあげたモンシロチョウがよい例です。狡猾とは、植物の対抗策を裏手にとるようなものです。それと同じようなことが出来ればオンリーワンになれます。

 

さいごに

 『弱者の戦略』、本当にお勧めです。上に述べたのは本のほんの一部分で、他にも面白いことが沢山あります。
 例えば、虫けらの語源である「ケラ」についてだとか、ヨーロッパの旗にワシやらバラやら派手な生き物が描かれる一方で戦国武将の旗には雑草が描かれていることについてなどです。
 雑草も森林から放逐された弱者ですが、人にしばしば踏まれ除去される道端で健気に毎年生きています。戦国武将もそんな雑草から合理性を学んだのかもしれません。

 今回の記事はここまでです。ご観覧ありがとうございました。

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