ごきげんよう。
今回はむっちゃ久しぶりにフリーゲームの感想及び考察をしていきます。
まずネタバレのない感想を述べてから小説風に全エンディングの流れを述べます。ゲームのリンクを貼っておくので、ネタバレのない感想を読んでみて興味が出ましたら遊んでみてください。
リンク先の少し下の「ブラウザ版を遊ぶ」ボタンから遊べます。
ネタバレなし感想
『かわいいは壊せる』…意味深なタイトルですね。舞台は福祉が大幅に低下した現代。公助も共助もなく、自助のみが頼りです。本ゲームはそんな中で少女「でここ」をレンタルし、一週間を過ごすというものです。特徴としては豊富なエンディング。なんと10種類もマルチエンディングがあります。内3種は似たものですが、残りの7種はそれぞれユニークな展開となっています。
そしてゲーム中の選択肢はたったの3つ。「なでなで」と「デコピン」と「何もしない」です。これらの行動の順序・数によって少女の想いが千変万化し、様々なエンディングへと繋がっていきます。
他に類を見ないゲームだと感じました。ジャンルとしてはノベル系ですが、30分もあれば大体のエンディングを見れて、遊んだ時間に対してかなり大きな余韻が残ります。直接エンディングに繋がらない部分も抜かりなくネタが仕込んであり、あまりノベルゲームをプレイしない自分もすごく楽しめました。フリーゲームなので是非触ってみてください。
タイトルで警戒されるかもしれませんが、暗い設定で暗い話は確かに多いです。しかし、引くような描写はありませんし、上手くネタ化されているので、いわゆる「やばいゲーム」ではないことは私が保証します。
少々ですが暴力の描写があることから対象年齢は12歳以上なのでご注意を。
さて、ここからネタバレありのエンディング集(文字で小説風に概要)、感想および簡単な考察を書いていきます。
攻略サイトを2つ置いておくので、感想等を読んで体験してみたいものがあればサイトを参考にして(しなくてもいいですが)是非やってみてください。
攻略サイト
①(作者サイト、重要ヒントまで)
http://palincos.main.jp/memo/deko_hint.html
②(個人ブログ、全選択肢あり)
ニコニコゲームアツマールに投稿されてるADVゲームかわいいは壊せる のざっくりした攻略法ですエフェクターと全然関係ないっす爆エンディングが10種類あるようでメインのエンディングが6つ (no1 2 3 4 5 10)サブのエンディングが4つ (no6 7 8 9)ありますメインエン
では書きます。
ネタバレ含むので下のほうに
↓
(ネタバレ有)エンディング集+感想・考察
折角なのでおじさん視点で小説風に書いてみてます。
対象は主要なエンディングである1~6と10です。
エンディング7~9はおじさんに対する評価の上下が異なり、会話こそ違うものの似た結末です。
エンディング1
「かわいいは壊せる」
クリスタル:暴食
でここを痛めつけるなんて到底できない。私はでここに朝食を作ってあげたり、なでなでしてあげたりしていた。そんなある日、でここはお皿をわざと割ってしまった。彼女は悪いことに対する罰を求めている。母に虐待されているでここに力を振るうのは気が進まないが、彼女の願いに応えてデコピンをした。彼女は泣いた。
その後、でここは母親に対する今の心境を語って聞かせてくれた。母は怖いが、悪いことに対してしっかりと罰を与えてくれたと。顔に一生残る傷をつけられたとき、母は反省してそこまで厳しい罰をしなくはなったと。母を慕っているような雰囲気だった。だが、でここの母がそうする理由は「わが子をレンタルさせて儲けるため」だろう。そう考えると深い怒りがこみあげてきた。子供でお金を稼いではならないし、子供にひどいことをするのもだめだ。
なぜ、でここはそんな母を慕っているのだろう?理由を問うと、「私を一人で育ててくれた、世界で一番の母だから」らしい。これまで母以外と接する機会がなかったのだ。でも、今、私と接してしまった。自分はでここに優しくしたが、そのせいで世界で一番であるはずの母が一番でなくなってしまった。彼女はこれまでの母親像が歪み、恐怖し混乱していた。私はそっと抱きしめた。
次の日から、彼女は私と居たいと言ってくれるようになった。だが、私は毎日仕事があるためでこことそう長くは居られない。だからその分、ベッドで優しくした(深い意味はない)。
最終日の夜。いつものようにでここに優しくしてあげた。そして寝ようとしたとき、彼女に引き留められた。彼女は朝が来るのを怖がっていて、ずっと私と話をしたがった。
話をしていると、朝が来た。玄関のベルが鳴った。でここは母と会いたくないと言い、ベッドに隠れてしまった。仕方ないので自分だけが応対に出ると、意外にもそこに居たのは警官だ。曰く、隣の女性が一週間ほど無断で仕事を休んでいるので、聞き込み調査をしているらしい。警官はそのまま帰っていった。
振り返ってもでここは居なかった。どこに居るのだろうかと思って探すと、ベッドの下に隠れていた。なぜ隠れていたのか問うと、「母に会うと連れ戻されてしまうから」らしい。そして、「怖かった」と。警官から聞いたことを伝えると、母は帰ってくる気が無いと悟ったようだ。でここは安心したのか、私への色々なお願いを聞かせてくれた。私はそのお願いに応えることにした。
彼女の日記には、幸せな日々のことが綴られている。
文句なしのトゥルーエンドですね。最も正しいし、最も幸福に終わる。いや、母から解放されたでここの第二の人生が始まる。おじさんのかわいがりが、でここの束縛を、不幸を壊したのです。
少し考察
ところで、正しいとは何でしょうか。自分は「関係」が正しいのだと思います。おじさんは正しい教育者であり父である。そしてでここは正しい被養育者であり娘である。二人合わせて、心を通わせて一線を越えることはない真の「家族」です。それは以前のでここの家庭とは全く違う。ゆえに幸せな日々を過ごすことができた。
その他のエンディングは警察に連行されるか死ぬかというバッドエンドですが、それらに共通するのは「異常な関係」です。警察にはその関係を見抜かれておじさんは逮捕され、関係は終わりを迎えます(例外はエンディング4、自滅する)。そう考えると、このゲームの目的は「家族となること」ではないでしょうか?
現に警察に連行されるとき、半分以上のエンディングにおいて警官は「おじさんの娘さん?」とでここに問います。が、でここは「いや、隣でママと暮らしてる」と答えます。つまり、おじさんの家族ではないのです。一方でトゥルーエンドでは、でここはベッドの下に隠れて警官をやり過ごしています。もしでここと警官が会っていれば、でここはおじさんの家族だ、と答えることでしょう。
…一つ疑問があるとすれば、どこに「暴食」の要素があるのか、ということです。これからおじさんのおいしい料理を食べたり、自分で料理を作るようになるからですかねぇ?これまで満足に食べていなかったみたいですし。
エンディング2(6)
「それでもぼくはやってない」(目覚めの一撃)
クリスタル:強欲
最初はでここに優しくしようと思いなでなでしていたが、ある日飽きたのでやめた。
辞めてから数日後、帰ってくると彼女がドアの目の前で立っていた。何事か聞くと、なでなでしてほしいらしい。なでなでしないで済みそうに無い気迫なので、仕方なくなでなでした。
そこから数日間なでなでし続けたが、何やら彼女の頬が赤い気がするし、目もハートになっている気がする。大丈夫だろうか。
最終日の夜、さすがにこのままでここの母親に返すのはまずいと思い、心苦しいがおしおきをした。でここは困惑していた。
翌朝、でここはなんとか正気に戻ったようだ。ベルが鳴ったので玄関に出ると、警官が立っていた。彼は私に隣の女性のことを聞こうとしたようだが、後ろにいるでここを見つけると私は署に連行されてしまった。
最終日にでここを撫でても寝かせてくれないことで困惑した方もいらっしゃるでしょう。自分もです。
何もせずに寝るとろくなことになりませんね。
エンディング2
「それでもぼくはやってない」
クリスタル:色欲
上と六日目まで同じです。
最終日の夜、彼女を正気に戻そうと思い、おしおきをしようとした。しかしでここは何を勘違いしているのか、唇を突き出している。でここがそれを望んでいるなら応えるべきだろう。口づけをした。でここは真っ赤になった。
翌朝、ベルが鳴ったので玄関に出ると警官が立っていた。警官は後ろにいるでここを見ると私を署へ連行しようとしたが、でここが私を引き留めた。私がでここの夫?? でここが妻?? まだ妻じゃない?? でここは混乱している。体のあちこちを触った回数までしっかり覚えられている。終わった・・・
当然、署に連行された。でここは置いてきた。
ネタエンドですね。終盤の勢いはは全エンドで最高のもの。
体のあちこちは、体のあちこちです。触ったかどうかでもちょっと会話が変わったり。
エンディング3
「痛みは快楽に、快楽は痛みに」
クリスタル:嫉妬
でここの母からおしおきしていいと聞いたのでたくさんおしおきしていた。彼女は泣いていたが、それでも続けていた。すると、いつの間にかよくわからない勘違いをされていることに気が付いた。なにやら、私のデコピンが彼女を住ませて居ることに対する「おかね」であるらしい。そして、彼女は私のデコピンを拒絶しないようになり、やがて要求するようになった。
ある日、なんとなくおしおきをやめて、なでなでだけしてみた。彼女は困惑していたが、おとなしく眠りについたようだった。
しかしその夜中、ふと気が付くと、でここは床で寝ている私の隣で寝ていた。
あまりに驚いたので、翌日彼女にベッドで寝ていなかった理由を尋ねると「おしおきされてないということは、おじさんに『おかね』を支払えていないからベッドを使えなくなったと思った」そうだ。私はでここに価値が無いとは全く思っていないので慌てて否定すると、でここはならばとおしおきを要求してきた。
だが、できない。彼女は愕然としていたが、出てきた言葉は「なんで気もちよくしてくれないの?」だった。え?おかね云々の話は?
彼女を気持ちよくするためならと仕方なくおしおきをすると、なでなでまで要求してきた。その日の夜はおしおきとなでなでをしてやると、彼女は目をハートにして満足したようだった。
レンタルしてから一週間が経った。ベルが鳴ったので玄関に出ると、母ではなく警官だった。その瞬間、でここが「どいて!」と叫びながら後ろから突進してきた。慌てて飛びのくと、でここは警官に突撃した。手には包丁が握られていた。私は当然でここにおしおきしたのだが、彼女は興奮したりもせず不思議な目をしていた。
そうしていると警官が衝撃から立ち直り、私は連行された。この状況なら私は誘拐犯で、でここは勇気をふり絞った被害者だ。そうなっても仕方ない。でここは何やらわめいていたが、どのみち今日で終わりの関係である。彼女が求めるおしおきをすることはもうできないだろう。
ドMエンドです。
でここの「おかね」の話、母が「レンタル娘はビジネス」と考えている影響を受けていると思うんですよね。でここはおじさんに世話してもらい、報酬としておしおきさせる。まあ気持ちよくなるための言い訳だったわけですが。
快楽を得るために実の母を殺害するという発想に至り、失敗しましたが実際に実行した辺り、かなりでここは歪んでしまっていますね。
エンディング4
「すべてはおじさんのため」
クリスタル:傲慢
最初の一日目だけはでここにおしおきするとどんな反応をするのか気になり、おしおきをしてしまった。しかし翌日振り返って考えてみるとなんともひどい行いだ。お詫びになでなでをしてあげることにした。
途中から様子がおかしくなり、でここはオトナの恋愛だ何だと言っている。よくわからないが、私が好きなことをしていいと言うので好きなことをし続けた。最終日も同じようにして過ごして眠った。
突如胸に激痛が走った。何事かと思い飛び起きると、でここが包丁を持って立っている。痛い。怖い。分からない。布団の端、部屋の端まで這って逃げた。
なぜなんだ、と問うと、「おじさんはでここが居ないと不幸だから、今日死ぬのが一番幸せ」と私に言い聞かせる。
理解できず戸惑っていると、もう一度刺そうとしてきた。咄嗟に避ける。死にはしなかったが、かなりの重傷を負ってしまった。なぜなんだ。でここが私を殺す理由なんてないはずだ。でここは勝手に理由を作り上げて、行為を正当化している。そんなものは傲慢だ!
叫んでももう彼女は止まりそうにない。意識が朦朧としてきた。すると彼女が「そんなに死にたくないか?」と問いを投げかけてきた。当然だ、と答えたが彼女は聞く耳を持たず、一言だけ思い出したように、私のことは嫌いではーー
ヤンデレ・・・ですね。デレてるか?ただのヤンな気もする。ヤンヤン。
このエンディングはトゥルーを除けば唯一警察に逮捕されないエンディングです。まあ最悪のバッドエンディングですけど。
ただ、このエンディングは考察の上では地味に重要で、でここの母は父からDVを受けていたという情報が出てきます。でここはおじさんに痛くされてから優しくされたことで自身を母と重ね合わせ、「これがオトナの恋愛」という結論を出しました。大人の恋愛の実例が母と父しかなかったばかりに。
……でここの事情を知れば知るほど悲しくなってきますね。
エンディング5
「無我の境地」
クリスタル:怠惰
レンタル娘とやらをしたはいいものの、人の娘だし扱いに困る。そっとしておこう…
・・・。
・・・。
・・・。
・・・。
・・・。
・・・。
・・・。
最終日になり、玄関のベルが鳴った。出てみると警官が居た。警官はうつろな目をしているでここを見ると、どういうわけか私を連行していった・・・。
・・・・・・・・・。
クリア後のでここの日記が狂ってました。何もせず7日間過ごすだけなので見てみるといいかも。
エンディング10
「でここの日記」
クリスタル:憤怒
でここと様々なコミュニケーションを取っていたある日の夜、でここが居なくなっていた。机の上に見慣れぬ本がある。手に取ってみると、それはでここの日記だった。でここの様々な心境の変化が書かれているが、昨日のページが荒れている。本当に出て行ってしまったようだ。
でここはいつまで経っても帰ってこなかった。
このエンディングに至る道のりは大きく分けて二通りあり、「トゥルーエンド失敗」と「なでなでとおしおきを繰り返す」です。後者はまあ狙ってやってるでしょうが、前者はショックがでかい。あれは迷う。
後者の場合、おじさんの行動に対してでここの理解が追い付かなくなっているので、おじさんを「狂人」だと判断します。身を守るための逃亡でしょう。
ご存じでしょうが、クリア後はでここの日記を見ることができます。でここの心情の変化が可視化されていて面白いですね。最終日以降も続いているのはトゥルーエンドのみです。
クリア後の特典
でここの目を眼帯で隠すことができます。そういうプレイが好きな人は喜ぶんでしょうかね。 開発者は絶対(*´Д`)ハアハアしてる。
終わりに
以上で終了です。分量多いな…。この記事の文字数をカウントしてみると5500字くらいありました。短編小説一作くらいです。そのくらいのボリュームがこのゲームにあって、たった3つの選択肢で表現されているのです。とんでもないですね。
では、今回の記事はここまでです。ご観覧ありがとうございました!